不動産の売買仲介手数料の上限は、法律で売買価格×3%+6万円と定められている。つまりどんなに手間暇をかけて仲介業務をこなしても上限が決められているため、不平等な制度と捉えられることもある。例えば800万円のワンルームマンションを仲介した場合だと仲介手数料は30万円となる。一方、3億円のマンションを仲介した場合でも同じ手数料率になることから、手数料は906万円ということになる。一般的には取引価格が高額になるほど手間がかかるのだから手数料が高額になるのは当然だという見方をされるが、実態はそうではない。取引そのものの手間や煩雑さと価格の高低は全く関連性はない。むしろ高額な物件の売り主の方が不動産の取引そのものに慣れていて、不動産取引の常識を理解してくれている分、スムーズに取引できたりもする。
ただ、こうした取引内容について判断した上で手数料額が決められる訳ではないため、取引の仲介人である不動産業者はより納得感、もしくはよりお得な仲介手数料額をみずから設定しようとするという業界の裏事情が存在する。つまり手数料3%+6万円の上限を超える金額を売り主もしくは買い主側から徴収するというものである。ちなみに売り主から直接物件を預かっている仲介業者が買い主をみずから直接客付けをした場合は、買い主からも3%+6万円の仲介手数料を収受することができるため、最高で合計6%+12万円を受け取ることができる。しかしこの最高上限金額をさらに超える金額を取ろうと考える不動産業者がいるということをここでご説明したい。
年収3000万 スーパー不動産営業マンの仕入のコツと極意【実務編】
1.高速で数字を組み立てろ
2.速算式の見つけ方
3.事業収支は舐め回せ
4.マーケット調査は論理の構成次第
5.下請け業者をたたけ
用地仕入れを実践する際のポイントを5つの項目からより具体的に解説してみた。毎年高い実績を上げている営業マンが実際に実践している内容であり、知らなかった営業マンにとっては少しハードな内容かもしれないが、これらの事を肝に銘じて実践してもらえれば、あなたの仕入れパフォーマンスは確実に上がることだろう。もちろん用地仕入れの不動産営業マンに限った話ではなく、収益系の営業マンにも通じる内容となっているので、仕入れ営業に携わるすべての営業マンに参考にしてもらいたい。
> 年収3000万 スーパー不動産営業マンの仕入れのコツと極意【営業編】
1.高速で数字を組み立てろ
ところでこの速算式であるが、何かこれと言った公式がある訳ではないので、先輩方に聞いてみる、もしくは自分自身で編み出すしか方策はない。以外のこの速算式を教えてくれる人はいないものである。速算式さえ見つけてしまえば、数字の組み立てはかなりハードルが下がり、業界に入って間もない新人でもある程度は物件を処理することができるようになってしまうのである。速算式の見つけ方については次でご説明したい。
> 裏で、100倍楽してる不動産営業マン続出!!
2.速算式の見つけ方
①月額賃料 → 月額賃料坪単価
②土地値 → 土地坪単価 → 土地一種単価(容積消化ベース)
③建築費総額 → 建築専有坪単価
④利益・諸経費(建物完成後売却をした時の転売益、購入時・売却時仲介手数料、登記費用、不動産取得税など)
⑤建物完成後売却時利回り
上記①、②、③は、専有の一坪の面積にまで小さく刻んで簡易計算をするためであり、またこうすることで他の物件と比較がしやすくなるというメリットがある。土地一種単価を割り出した時点ですでに相場から見ても明らかに高いというケースであれば、その瞬間仕入れ検討を中断することも十分あり得る話で、一方で月額賃料坪単価が際だって高ければ、土地一種単価が高くとも検証するに値するなどということもあり得るのである。ちなみに専有坪単価、つまり建築単価についてはかなり細長い建物であったり、支持層が極端に深い、また戸数が極端に少ないなどの建物でないかぎり、大幅な値上がりはない前提で考えてもらって良いだろう。
ここで上記①③④⑤を前提に②を導き出す(いくらで土地を購入すれば良いか)方法を実践してみる。。
①月額賃料坪単価 → 月額15,000円/坪
②土地一種単価 → ?/一種
③建築専有坪単価 → 150万円/坪
④1.25~1.35倍(利益率を売却時の物件価格の10~15%程度で見ており、なおかつ取得税と登記費用、また解体費用の有無などによっても上下変動するため、多少感覚的になる)
⑤4.5%(建物完成後売却時利回り)
計算式)
①15,000円 × 12ヶ月 ÷ ⑤4.5% = 4,000,000円
4,000,000円 ÷ ④1.30 = 3,076,923円
3,076,923円 ー 1,500,000円 = ②1,576,923円
答え)
一種単価1,576,923円で土地を購入すれば、規定の事業利益を確保できるということになる。
仕入れ担当者によって速算式は異なるものを持ち合わせているのだろうが、基本的には上記①~⑤の組み合わせを変えることで導き出したい答えを試算しているだけである。またアセットタイプが異なっても①~⑤の組み合わせは変わらないものと考えて良いだろう。
3.事業収支は舐め回せ
そこで何としてでも物件を仕入れるためにちょっとした秘策をお教えしたい。
仕入れ検討する時、各会社でExcelシートで作成されている事業収支に数字を落とし込んで行く作業を行うはずである。入力する主立った数値はおそらく以下の項目になるだろう。(投資用のマンションを開発し、竣工後まもなく売却する前提で考えてもらいたい。)
【購入時費用】
①土地の仕入れ予定価格
②購入時仲介手数料
③登記費用、不動産取得税
④土地固定資産税
⑤土壌汚染等のリスクに対する対策費用
【建築費用】
⑥建築予定の建物本体の建築コスト
⑦既存建物解体費用
⑧新築建物竣工時の登記費用
【売却時費用】
⑨新築建物売却時仲介手数料
また①~⑨に加えて、⑩「建物竣工後の想定賃料」も事業収支に落とし込んで行く必要がある。
①~⑪の各項目の中でどの担当者が入力しても同じ数値になるのは、①~④および⑧、⑨だけである。それ以外の項目に関しては、担当者によって異なる可能性がある。理由を以下に説明したい。
まず⑤についてであるが、土壌汚染等の地中内にあるリスクを事前にしかも正確に予測することは困難を極める。土地の瑕疵担保責任を売主側に負担させてしまえば、ここの費用は0円にすることができるが、プロが土地を購入するのであれば大抵の場合、瑕疵担保責任は買い側の負担となる。対策費用を事前に見積もる方法として、デベロッパー担当者は普段以下の計算式を用いている。
敷地面積 × 深度 × 35,000円~40,000円/立米 = 土壌改良費用
ポイントとなるのは汚染深度をどのラインで読むかということである、社内で決められている深度ラインもあるかもしれないが、担当者の読み次第でもここはある程度圧縮できる項目でもある。また侮ってはいけないのが、敷地面積が広ければ広いほど全体事業に対するコスト割合は想像以上に高くなるということである。例えば60平方メートルの敷地に対して深度2mの土壌汚染があった場合、最大480万円の土壌改良費用が試算される。これが倍の120平方メートルの敷地となると単純に960万円の土壌改良費用ということになるが、敷地が大きくなれば、それだけ汚染されている範囲が広がる可能性もある上に、予定建築物も同時に大きくなるため基礎部分の深度も深くなる、その分改良費用にコストを欠ける必然性も出てくるのである。つまり以下の数式が考えられる。
120平方メートル × 4m × 40,000円/立米 = 19,200,000円
2,000万円近い対策コストとなると全体事業収支にインパクトを与えるレベルになってくる。そうなると当初予定していた土地の価格では仕入れることができない可能性も出てくる。また事業収支上の土壌汚染対策費用は、あくまで予想という意味での予備費用に過ぎないことから、実際のその通りの汚染が発覚するかどうかは仕入れの前段階からは分からないのである。つまり会社の基準があいまいなのであれば、そこは深度を4mではなく2mや1mにしておくということもできるはずである。もちろんリスクを大幅に見ておくという考え方は重要であり、その点を考慮するのであれば、購入条件として土地の瑕疵担保責任は売主負担で交渉しておいて最終的に折り合いを付けて行く方法が得策であろう。もちろん買主がプロとなると完全に売主側に負担させるというのはハードルが上がるため、価格面で負担割合を仕切っておくなどの方法を検討すべきだろう。例えば、1,000万円までの土壌改良費用は最低でも売主側で負担していただいて、それ以上の費用がかかった場合は買主側ですべて負担するというものである。こうした明確な線引きを事前に行っておけば、どうしても売却をした売主であれば、条件を飲んでくれる可能性は思いの外高いはずである。後はその取引を請け負った仲介業者の交渉の腕次第ということになるだろうか。
こうして考えてみると土壌汚染などの土地に内包するリスクはどの担当者が試算しても一緒とは言えなくなってくる。どこで落としどころを見ておくのかは、その担当者に依るところである。
次に⑥建築予定の建物本体の建築コストについてであるが、こちらもゼネコンとの交渉次第でかなり価格交渉できるはずである。もちろん大規模開発を行うデベロッパーともなると仕入れ担当者のセクションとはまた別のセクション、つまり建築部などの管轄で建築コストに関する見積もり発注作業が行われるため、仕入れ担当者の意向ですべてハンドリングをすることは困難となる。しかし、建築部の担当者が世の中のゼネコン各社をすべて知っている訳ではないことも事実であり、そこは仕入れ担当者の普段からの営業努力によってゼネコンの新規開拓を推進すべきであろう。またゼネコンも見積額の試算をするのに通常3週間~1ヶ月程度を要する。もちろん建物のサイズによっても異なるが、例えば50戸にも満たないワンルームマンションやファミリータイプのマンションであれば、十分な期間である。ゼネコンの窓口担当者も人間であるから、どのデベロッパーから依頼された案件か、また過去に実績があり懇意にしている仕入れ担当者であるかなどによっても見積りが出てくるスピードやコストの面での努力も変わってくると認識しておいた方が良いだろう。もちろん社内の建築部の担当者と普段から良い関係を築いておくことも重要であることは言うまでもない。
4.マーケット調査は論理の構成次第
購入検討をしている物件A)
価格5億円、築年数25年、S造、オフィスビル、東京都千代田区、最寄り駅3分
比較検討する物件①)
価格5億円、築年数25年、RC造、オフィスビル、東京都中野区、最寄り駅3分
比較検討する物件②)
価格8億円、築年数30年、S造、オフィスビル、東京都豊島区、最寄り駅3分
比較検討する物件③)
価格4億円、築年数40年、RC造、オフィスビル、東京都中央区、最寄り駅4分
物件Aを購入検討する上で、まず比較対象にすべき物件は①、②、③の内どれだろうか。答えは③である。①と答えたいところだが、そこは次順位で比較検討したい物件である。③についてはまずは中央区と比較的相場が似ている千代田区であることが挙げられる。次に価格帯も5億と4億の違いなので同じ価格レンジと捉えて良いだろう。大きく異なるのは築年数の部分である。15年の差があるが、実はこれはRC造とS造のそれぞれの残存年数からするとそれほど大差はない。単純に基本数値が一致する物件を比較対象とするのではなく、また比較物件ないからと言って購入検討を諦めるのではなく、その物件を構成するスペックや数値を丁寧に紐解いて、そこから論理的に積み上げて行くことでマーケットの調査を実践することは十分可能なのである。この論理性が仕入れ担当者には極めて重要で、例えば社内で誰も仕入れたことのない新しいタイプのアセットを仕入れようとした時、比較事例を持ち出すことは一層困難となる。例えば投資用マンション用地しか仕入れたことのない会社で、投資用オフィスビル用地を仕入れようとした時、出口のマーケット感覚が皆無となるため、緻密に事業計画を設計することができない。しかし投資用マンションと投資用オフィスの市場全体の利回りに関するマーケット調査はインターネットで調べればおおよそ把握することぐらいはできる。そこから投資用マンションと投資用オフィスビルの利回りの相違を確認し、投資用マンションであればの数字の組み立てに一定の係数掛けてやればある程度アジャストさせることは可能といえるだろう。もちろん数字だけの問題ではなく、最終購入者の属性がそもそも異なるという事実もあることから、そのあたりのヒアリングは実績のある周辺業者に相場も含めて可能な限りヒアリングをかけておくべきだろう。
5.下請け業者をたたけ
コストダウン前
①測量費:100万円
②土壌調査費用:100万円
③解体費用:2,500万円
コストダウン後
①測量費:95万円
②土壌調査費用:90万円
③解体費用:2,250万円
差し引き265万円の差額が生じている。測量費と土壌調査費用に関しては一般的には大幅な値引き交渉が通りにくいケースが多いが、解体費用に関しては、ひと山のどんぶり勘定で見積もられているケースが多いため、以外と大幅な値引き交渉が通りやすかったりする。人工代とトラックの台数また、解体用の什器のレンタル期間の組み合わせで見積もり試算が行われることから必然的にどんぶり勘定になってしまい、だからこそ交渉次第でコストの圧縮できる可能性も高いのである。建築建材そのもののコストとなると値交渉の幅は極めて薄いが、人工代のウェイトが高い業態に関しては比較的値交渉が通りやすいと思っておけば良いだろう。
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